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innerchild vol.4
『パンゲアPANGEA』
無事終了致しました。沢山の皆様のご来場、有難うございました!
■御 挨 拶

はじめまして。innerchild主宰の小手伸也と申します。
この度、MeguMiさんPRの許、×2.5<ニバイハン>のお世話になる事になりました。
皆様、何卒宜しくお願い申し上げます。

まずは自己紹介を…
小手伸也(コテシンヤ)1973年12月25日生
早稲田大学演劇倶楽部在籍中、「オハヨウのムスメ」に参加。 大学卒業後フリー。「NYLON100℃」「カムカムミニキーナ」「拙者ムニエル」等への客演活動を経て、 98年「innerchild」を旗揚げ。主宰として全ての作品の作・演出を手がける一方、役者としても自劇団、 他劇団を含め精力的に活動中。
…であります。

■Innerchildとは…

小手伸也が自らの作・演出作品を発表する場として、1998年4月に結成された 比較的若いユニットです。 「客演を重視する準プロデュース形式」を採用し、プロデュース公演の持つ 新鮮な空気感と、劇団の持つ一貫したテーマ性、という双方の持つ良い部分を 兼ね備えた柔軟性に富む団体として企画されました。

心理療法の専門用語でもある「インナーチャイルド※」を冠名とする当ユニットは、 その由来通り、「心」の問題を中心テーマとし、心理学や精神病理、 具体的な心理カウンセリングの手法やセラピーの理論 といった客観的事実に基づく丁寧な人物・背景設定、 そしてその作品毎に歴史、宗教、民俗、物理科学、超常現象、そして お笑いといった多岐に渡る様々なエッセンスを盛り込む事で、 物語性に富む重厚なエンターテイメントの構築と表現を目指しています。

また演出面では映像を駆使し、舞台上とシンクロさせる事で、視覚的な表現の 広がりを追求し、具体性と説得力を伴った流れるようなストーリー展開で、 観る側が自然と作品世界に没入出来る空間をプロデュースします。

以上がinnerchildの団体及び作風の概要となります。

※「インナーチャイルド(Innerchild)」とは、
心理療法、主に自己カウンセリングの手段の一つで、自分の中の傷付いている部分を
「子どもの時の自分」として具体的にイメージし、その子を癒そうとする事で
自分の「心的外傷(トラウマ)」と向かい合う方法の事をいう。
■今回の作品について



さて、今回のinnerchild vol.4『パンゲアPANGEA』は、劇団史上最多出演者数、
最大のスケールでお送りする、渾身の一作となりました。

客演陣も豪華です。まず女性陣では、
「NYLON100℃」から、最近は舞台以外での活躍も著しい<美少女>新谷真弓さん。
「指輪ホテル」から、グラマラスな物腰で皆を惑わす<セクシー>安元有加さん。
続いて男性陣は、
「動物電気」より、このHPを御覧の皆様は御存知でしょう<奇人>辻脩人さん。
「東京オレンジ」より、同劇団のスタイリッシュな劇風を担う<優男>牧山祐さん。
「拙者ムニエル」より、独特の存在感にイライラも募る<凡夫>寺部智英さん。
「くろいぬパレード」より、今回自ら参加の名乗りを挙げた<熱血漢>前田宏さん。
最後に「猫ニャー」より、芸達者な酒豪の私生活は<ナンセンス>小村裕次郎さん。
という個性派揃いの顔ぶれとなっております。

そんな彼等が、各劇団のカラーと自らの個性を生かしつつ、ウチのメンバー達と共に 新たな物語世界を紡ぎ出す。これは私事ながら、劇作家として演出家として以上に一芝居人として、 今から非常に楽しみであります。

さて、肝心の内容に関してなのですが、この場では関係者に配布された本公演の「企画書」の一部を抜粋して、 皆様に御紹介したいと思います。私自身が何を考え、何にインスパイアされて本作品創りに到ったかを、 ズラズラと綴ったモノです。
もし興味を持たれた方は、本当に読みにくい文章で恐縮なのですが、是非一読してみて下さい。

■PANGEAとは ―――


今から凡そ3億年前、地球上の大陸の全ては、たった一つの超大陸の一部でした。
その大陸の名を『パンゲア』と言います。 名付けたのは大陸移動説を唱えたドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナー。 「昔、大陸は一つだった。」 最初『パンゲア』は、それを信じたウェゲナーの仮想概念でしかありませんでした。 しかし科学が発展し、プレートテクトニクス理論の解析が進んだ現在、 『パンゲア』は過去唯一の超大陸ではなかったとされています。 最新の学説によると、この地球では約4〜5億年周期で超大陸が生まれては 分裂しているそうで、『パンゲア』以前にも、『ローレンシア』『ロディニア』『ゴンドワナ』という 超大陸が存在していました。そして現在のポスト・パンゲアとも言われる分裂期も、 計算によれば後2億年程で終わりを告げ、その後にはアジア大陸を中心とする新たな 超大陸が誕生すると言われています。 現在『パンゲア』は、過去に起こった事象の一過程として認識されています。 五つに分かれた大陸を描く現代の世界地図を前に、太古唯一の大陸として夢想された 『パンゲア』は、そのもっと太古にはやはり分裂していた訳で、分裂している現代の世界もまた、 遠い未来にはやはり唯一の大陸となるのです。 「昔、大陸は一つだった。そして未来、大陸は一つになる。」
タイトル・テーマ(雑記) ―――


僕が図鑑少年だった頃、『パンゲア』という言葉からイメージしたのは、 「この世界は昔一つだったんだー」という壮大な歴史の持ち得るロマンティックなノスタルジーでした。 そんなイメージに「昔一つだった物が、分裂して複数になる」という新たに象徴的な イメージを結びつけて考える様になったのは、勿論大人になってからです。 「一からの分裂」言い換えれば「唯一絶対だったものが分裂して相対化する」という現象。 それは思想的に置換すればポスト・モダン以降、社会全体が極端な超個人主義に 走りつつある現代という社会にそのままオーバーラップします。 そんな「分裂」気味な社会風潮を受けて、今『パンゲア』という言葉には、 僕が図鑑少年だった頃には無かった、実感のこもったノスタルジーみたいなものが 付加価値として付いて回っている。そんな気がします。 今から4年前、ダン・ラックスマンというワールドミュージックでは有名なプロデューサー (『Deep Forest』を世に出した事で知られる)が、『Pangea』というCDをリリースしました。 その曲の数々が「この世界は元々一つだったんだよ」という最近の癒し系音楽の 源流とも言える回帰的なコンセプトの許成立しており、『パンゲア』という言葉に再び 郷愁の様なものを覚えたと共に、その言葉の持つ意味を見つめ直す一つの機会になりました。
『パンゲア』。
「昔一つだった世界」。「分裂してしまった今」だからこそ「二度と戻れない昔の世界」。 統合から分裂に到る一方通行のイメージ。その「戻れない」イメージがノスタルジックに、 時にロマンチックに人の心を揺さぶる。「昔はそうだったんだ。」 「本来人間は一つになれるものなんだ。」 そうやって僕等は〈統合→分裂〉という図式に「現実」を感じ、〈分裂→統合〉という図式に 「理想」を顧みるのではないか。 でも『パンゲア』の真実は、前節で述べた通りです。 超大陸という現象は長い歴史の一過程でしかなく、フカンして見れば〈→統合→分裂→統合→〉 という図式の一部でしかない。ノスタルジックに「戻れない」と思っていた「理想」は、実は常に手前に 待ち構えていて、「現実」と地続きに繰り返されて行く運命にある。つまり世界にとっては、 「統合」も「分裂」も、「理想」も「現実」も双方向なものでしかなく、それを一方通行で 絶対的なものと考えているのは、生まれてからは死ぬしかない、一方通行な我々だけなのです。 世界は世界。人智を超えてただそこにある。それが世界。『PANGEA』。 それは、好き勝手にその意味を見出そうとする我々を乗せて、好き勝手に「死と再生」を繰り返す。 それは今も昔も元々一つだし、そしていつでもバラバラなのです。
物語(あらまし) ―――

見つめ合う一組の男と女 女は男に「また連れて来てね。」と言う。 男は女に「またいつか来よう。」と言う。 男は女を椅子に座らせ、何かを囁きながらそっと女の髪を撫でる。 女は黙って身を委ね、虚ろな瞳で男を見つめている。 男は黙って煙草に火を付け、特に吸うともなく煙をくゆらせている。 そしてその手許に女の視線が落ちた次の瞬間、 男はおもむろに女の目の前に煙草をかざすと、ゆっくりと左右に振り始めた。 そして最期に、誰にも分からない笑顔を浮かべると、そっと人差し指でその火を押し消した。 意識を失い崩れ落ちる女。 後には全てを覆い隠す暗闇。

男(古澤龍児)は波打ち際で頬を洗われ、突然目を覚ます。 "アレ、催眠誘導を施していたのは自分の方ではなかったか?" 前後不覚のまま周りを見渡すと、そこは多分何処かの「島」。 青い海。 白い砂浜。 その奥には樹木が生い茂り、朽ち果てた鳥居と、遠くには高台のような物が見える。 自分の置かれた思いもよらぬ状況に混乱を隠せない男。 が、すぐに自分のすべき事が何なのかを理解した。 椅子に座った少女(新谷真弓)を見つけたからである。 男は、少女に向かって「君を助けに来た」と言う。 少女の意識は無い様に見える。 しかし男は、そんな少女の様子などお構いなしといった勢いで、こう問い掛ける。 「他に何人いる?」 「ここには全部で何人いるんだ!」 そして男は懐から一枚の書状を取り出し、天に掲げてこう宣言した。 「これから私とここにいる全ての人格及び、人格状態の皆さんと契約を交わしたい。 その暁には必ず皆さんを助け出せるよう、最大限の努力をしたい!」 「その必要は無い。」 その声の主(小手伸也)は、数人の女性を連れて、まるで保護者の様に少女の背後に立っていた。 「かわいそうに、きっと遭難のショックで錯乱しているんだ。」 『遭難』 その言葉に、男は一瞬ドキッとした。 返す言葉が無い。確かにここが何処なのか見当も付かなければ、この男に見覚えも無い。 自分が何故突然こんな「島」に投げ出されていたのか。 自分の身に一体何が起こったというのか。 この男のいう『遭難』とは何を指して言っている事なのか。

分かるのは、自分が誰かを救助しに来たという事。 自分が「カウンセラー(心理療法家)」であるという事。 そして先程の宣言が、『多重人格治療』の第一段階を意味するという事だけだった。 謎を孕んだ「島」での生活は、こうして始まった ――――――――――――     


innerchild vol.4『パンゲアPANGEA』
無事終了致しました。沢山の皆様のご来場、有難うございました!